労働者派遣事業の概要

労働者派遣事業とは、派遣元事業主が自己の雇用する労働者を、派遣先の指揮命令を受けて、派遣先のために労働に従事させることを業として行うことをいいます。

許可を取得するための要件

(1)資産要件

直近の事業年度における資産状況において、以下の3つの要件をすべて満たすこと。

①基準資産額(資産総額-負債総額-繰延資産-営業権)≧2000万円×事業所数
②基準資産額≧負債×1/7
③自己名義の現金・預金の額≧1500万円×事業所数


(2)事業所の要件

①事業で使用し得る面積が20㎡以上あること。
②使用目的が事務所であること。
③事業所の独立性が保たれていること。
④個人的秘密を保持し得る構造であること。
⑤風俗営業が密集する等事業の運営に好ましくない場所にないこと。

(注意!)労働局による事業所の実地調査が必ず実施され、派遣元責任者の席、職務代行者の席、鍵付きキャビネット、研修・面談スペース、社名表示があるか等を確認されます。


(3)派遣元責任者の要件

以下の要件をすべて満たす必要があります。

① 3年以上の雇用管理経験(人事・労務担当者、支店長、工場長、労基法上の管理監督者であったと評価できること)があること。
② 派遣元責任者講習を許可申請の受理日前に3年以内に受けていること。
③ 職務代行者(派遣元責任者が不在の時に代わりに対応ができる者)を選任すること。
④ 労働者または役員で、派遣元責任者として業務に専念できること。


(4)キャリア形成支援制度の要件

平成27年9月30日の派遣法改正により追加された許可基準です。

派遣元事業主は労働者のキャリア形成を行うために、段階的かつ体系的な教育訓練の実施計画を定めることとされ、以下の要件をすべて満たさなければなりません。

① 全ての派遣労働者を対象としたものであること。
② 実施する教育訓練が、有給かつ無償で行われるものであること(経費は会社負担および訓練の時間は労働時間として扱う)。
③ 入職時の教育訓練が含まれたものであること。
④ フルタイムで1年以上の雇用見込みの派遣労働者については、毎年おおむね8時間以上の教育訓練を実施すること。
⑤ キャリアコンサルティング(キャリアコンサルタント、職業能力開発推進者、3年以上の人事担当職務経験がある者、または営業担当者のいずれかの者が担当)の相談窓口を設置すること。


(5)専ら派遣が目的ではないこと

特定の会社のみに労働者を派遣する、いわゆる「専ら派遣」は派遣法で禁止されいます。よって、「専ら派遣」を行うことを目的として労働者派遣の許可を受けることはできません。
グループ企業に派遣する場合は、派遣労働者割合を全派遣労働者の総労働時間の8割以下に制限することになっています。

(注意!!)実務上では、7割に達した時点で、行政指導が実施されます。


(6)その他の要件

・加入要件を満たしている労働者すべて適正に労働保険・社会保険に加入すること。

・安全衛生法59条に基づき安全衛生教育の実施体制の整備していること。

・個人情報適正管理規定を定めること。

・就業規則または労働契約書に必要事項を記載すること。


(7)最後に

派遣の許可申請を行うには、資産に関する要件と事業所の要件が高いハードルになります。

また派遣事業者に対する許可後の実施調査は大変厳しく、数か月に及ぶことがあります。特に、キャリア形成支援制度に関する要件、派遣契約書、雇用契約書、就労条件明示書の記載内容はかなり細かくかつ厳格にチェックされます。

許可申請から実際に営業開始までには、最短でも3か月を要しますので、計画的に手続を進めることをお勧めいたします。

労働者派遣事業を行えない業務

1 港湾運送業務  2 建設業務  3 警備業務  4 病院等における医療関係業務

ただし、下記1〜4のいずれかに該当する場合は、労働者派遣事業を行うことが認められています。

 1 紹介予定派遣をする場合

 2 当該業務が産前産後休業、育児休業、介護休業を取得した労働者の業務である場合

 3 医師、薬剤師、看護師、准看護師、臨床検査技師及び診療放射線技師の業務であって、当該業務に従事する派遣労働者の就業の場所がへき地にある場合

 4 医師の業務であって、当該業務に従事する派遣労働者の就業の場所が地域における医療の確保のためには医業に派遣労働者を従事させる必要があるとして厚生労働省令で定める場所(へき地にあるものを除く。)